2013年6月30日日曜日

「すごい」通訳

「お仕事は?」
と聞かれて
「通訳です」
と答えると
「すごいですねえ」
と言われることがしばしばある。
先日などは、化粧品売り場の店員さん
「わあ、すごい!私、初めて見ました!」
と言われた。。。 パンダじゃないんだから。。。

この後に来るのが大抵、
「通訳さんだったら、やっぱり英語ペラペラなんですよね、すごーい!」
である。こう言われると、
うーん、英語ペラペラだったらすごいのか。アメリカに行けば犬でも英語だけどな
と言い返したくなるのを、ぐっとこらえる。

 だいたい、私は通訳者としては英語は下手な方だと思う。
 特に、ニュースの仕事専門になってからは、
 「いかにわかりやすく普通のことばで伝えるか」
 に腐心しているので、語彙は少ないし、こじゃれた言い回しも使えなくなった。
 さまざまな国の人を聞き手として想定しているので、
 米語でも英語でも豪語でもどこでもない、そういう意味では全然ペラペラでない、
 英語の使い手になっていると思う。

職業に貴賤はないし、そういう意味で私は自分の職業がなにかより上とか思ったことはない。
だから、そういうニュアンスで「すごい」と言われることには抵抗がある。
自分の前に開けて来た道をたどってきたら今がある、それだけなのだ。

通訳だからというだけで「すごい」ってことは、ないと思う。

でも「すごい通訳」は、いる。
それは、交代要員が来ない中で何時間も一人で頑張る、とか
会議の前夜に渡された厚さ10センチの資料をちゃんと読みこなしてくる、とか、色々ある。
そういう部分を見て、
「いや~すごいですねえ」
と言ってくれれば、通訳者も嬉しいだろう。

私にも「すごい」所はあるけれど、表に出る仕事ではないから、なかなか気づかれないだろうな





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