今回も台風16号が、まるでTLFに合わせるかのように中国の方を回ってゆるゆると近づいていた
が、26日に甲府で共演したミユキ・タンゴのリーダーのパワーの方が優ったのか、台風は温帯低気圧となり、穏やかな好天の中でのツアーとなった。
5日間で8ステージという強行軍の中、最終日の29日横浜エアジンでのステージの前に我が家に立ち寄り、ライブに出かけることができない夫のためにホームコンサートをしてくれた。
夫は身体は動かせないけれど、音楽も会話も楽しんで普通に暮らしているので、
こんなふうに、「出てこられないならこっちが行くよ」と訪ねてきてくれる友人は歓迎だ。
夫が病気になって間もない頃は、「ALS患者ってどんなもんだろう」という好奇心からか
たいして親しくもなかった人が見舞いに来たり、「一度くらい見舞いに行かなければ」
という義理から来宅したがる人があって閉口したものだ。
ミ・ブリンの冬ポンがエレピを貸して下さり、午後メンバーとともに車で運んできてくれた。
谷本さんはこの1年半ほどの間に3回来宅しているけれど、なおこさん、ケイトさんとは
前回の関東ツアー以来2年ぶり?
Facebookなどで近況を交換しているので、久しぶりという気がしない。
お約束の博多通りもんを頂く。
いつも夫とブエノスのタンゴラジオ番組を聞いて、スペイン語を訳してくれているY子さんも招き、
一緒にお昼を食べ、タンゴの話、なおこさんのお子さんたちの話、谷本家の猫の話など、
おしゃべりを楽しんだあと、いよいよ演奏。
ときどき「記憶スケッチ」状態になりながらも、みっちり充実した生音を8曲聞かせてくれた。
もしかすると、PAなし生音のTLFを聞くのは初めてだったかも知れない。
そしてこの至近距離。ぐんぐん音の力が身体の中に入って来る。
TLFは踊らせる演奏を本分としているのだが、それはすなわち「拍動を共有させる」ということではないか、と感じた。彼らの演奏を聞いたら、それに乗らざるを得ない。普段CD音源の踊り場で音と関係なく習ったステップを次々に繰り出して踊っている「つもり」になっている多くの御仁たちでも、この音を聞いたらちゃんと「踊る」のではないだろうか。(最近踊りに行けてないので確かめられない。。。)
楽しい時間はあっという間に過ぎ、メンバーは冬ポンの車でエアジンへ。
谷本さん、なおこさん、ケイトさん、冬ポン、特別な時間をありがとう!
私は後片付けをしてから開演時間に合わせて会場へ。
ボス・うめもとさんが、お弟子さんのフランス土産のおすそわけを下さる。
なぜかといえば、うめもとさんがFBにアップする美味しそうな頂き物の数々に
いつも私が恨めしそうなコメントを付けているから、哀れに感じてくれたのだ、たぶん。
エアジンは、私たちが最初にTLFを聞いた場所。その時夫が小型の録音機で取った音源が、
TLF3のCDのラストカットに使われ、その後私たちが福岡に彼らを聞きに行き、
と親しくなっていったのだった。
ダンスの師匠のケンジ&リリアナさんに出会ったのも、同じエアジンでのライブで
ブエノスで会ったダンサーやミュージシャンたちに共通するタンゴの心が
ふたりにはある、と直感して、その後師と仰ぐことになったのだった。
エアジンのステージ、前半は歌手のKaZZmaによるギター弾き語り。
KaZZmaの歌は「ブエノスアイレスのマリア」でしか聞いたことがなかったので
楽しみにしていた。 歌はもちろん、ギターのボルドーナ感もよかった。
谷本さんのヴァイオリンも2曲絡んで、全部で10曲、熱唱。
後半はいよいよTLF。
「3人で15人分」の触れ込みどおり、始めからガンガン来る。
エアジンのお客様、おそらくTLFが初めての方が半分ぐらいいらしたのではないだろうか。
その方たちがどんどん巻き込まれていくのが、最前列に座った私の背中に伝わってくる。
TLFは前回のブエノス行きで掴んだものを今春CD5にまとめており、
それは聞いていたのだが、目の前で演奏する様子を見ると、
身体の使い方が大きく変化しているのがわかる。
やはり3人とも踊るようになったからなのだろう。
だからこそ生まれる、踊り手、聞き手との一体感なのだと思う。
音楽は全身全霊で奏でるものだと、改めて思わされる。
我が家では「記憶スケッチ」だったVida Mia は譜面を出して(笑)ばっちり。
アンコールでは、KaZZmaと一緒に2曲、
そして最後に、私たちとの思い出のDerecho Viejoを演奏してくれた。
重箱にぎっちりつまった押し寿司のようなしっかりした演奏に
たくさんの元気をもらって、帰路に着いた。
TLF、KaZZma ありがとう!