夫の自宅療養生活を支えるものについて、いくつか書いてみよう。
夫が難病だ、というと、
「入院してるの?」
という人がけっこういるが、
病院というのは「病気や怪我を治療するところ」なので
治療法のない患者はおいてもらえない
のである。
なので、夫も自宅で、色々な器具や人の助けを借りて生活している。
ALSは筋肉を動かす神経ニューロンが壊れていくために筋肉が動かなくなる病気で、
中でも呼吸筋が動かなくなることが命取りとなるため、
生き延びるためには病気の進行に合わせて、人工呼吸器を使うことになる。
人工呼吸器には、気管切開をともなう侵襲型のものと、
顔にマスクを装着して用いる非侵襲型のものがある。
侵襲型は、気管切開するため、つけてしまうと口から食事したり
自分の声で話すのが困難になる。
また、普通の人なら手術のときなどに一時的に使って、その後取り外すことはできるが、
「生命維持装置」と言う位置づけになっているため、
ALS患者のように、それをはずしたら呼吸が止まる恐れが大きい場合は、
いったんつけたらもうはずすことができない。
一方、非侵襲型は、取り外し自由なので、
症状がさほど進んでいないときから時間を限って使う、ということもできる。
夫が使っているのも、この非侵襲型タイプの「バイパップエーバップス」というもの。
黒いボックスが本体。マスクの下になっている右半分は、加湿タンクが納まっている。
真ん中においてある「鼻マスク」を鼻に当てて、頭にベルトで固定し、
スイッチを入れると、空気が送り込まれて呼吸を助けるというもの。
鼻マスクは、口を開けていると空気が抜けてしまうので、
寝るときは口まで覆う「口鼻マスク」にはめ換えて使っている。
去年の3月にALSの診断を受けた後、4月に入院して機械の調整と練習をして、
最初は夜寝るときだけ使っていたバイパップだが、少しずつ使う時間が増えて、
先月後半くらいからは、朝晩、2階の寝室と1階の居間を移動する間以外は
ほとんど外さずに生活している。
この機械は1台しかレンタルできないので(自費で調達すると高価)、
移動の度に私が1階→2階→1階と運んでいる。
加湿器のタンクの水は毎日1回いっぱいにして、ちょうど無くなる感じ。
マスクは毎日アルコールを含むウェットティッシュで拭くほか、2日に1回水洗い、
ベルトも毎日洗濯したものに交換している。
半年くらい前までは、食事のときは外していて、
それが段々苦しくなってきたときは、もう、口から食べるのはあきらめるか、
と思ったのだが、ためしに鼻マスクをしたまま食べてみたら、
案外大丈夫なことがわかり、今も、私が夜仕事でないときの夕食は、
マスクをしたまま普通食を食べている。
このバイパップは、小型軽量で音も小さいのだが、
電源がACのみのため、停電になったらバッテリーに差し替えなければならない、
というのが難点だ。なにせ、夫は手が使えないから、人が居なければできないからだ。
太陽光発電にすれば、停電の心配がない、と気づいたのはつい最近のことだけど、
まだその可能性については探っていない。