2019年12月31日火曜日

At year's end 年末に

(日本語は下に)

It's time to look back 2019.
I continue to hold a void in the center of my heart that I know will never be filled.
I'm still searching ways to live with it although I'm doing better with it than last year.  This year, my eyes turned more to things around me, and I notice the world is changing.  Places we went together are no longer there, new buildings are being erected here and there, new technologies are available, and everyone appears to be keeping in pace.  I feel as if I remain collapsed on the roadside, looking at the back of my friends who are moving forward, fast. 

Some of the expressions that came from people who had the same experience of losing their spouse caught my attention as I heard them on the radio or on TV this past year.

One said, "you should not forget but it's OK to try not to recall."
Another said, " there's no long hope or dream for me/ I don't say this out loud, but I whisper, 'I'll live as long as possible for your part, too.'"

Maybe I'll hang onto these words for the time being.

It was good that we had a special milonga on the anniversary of my husband's passing back in February.  I'm planning to have another one next year again with Trio Los Fandangos.  It should be a wonderful time.

May 2020 bring you happiness and joy!


年の瀬に今年を振り返ってみれば、相変わらず心に空いた穴は厳然とそこにあり、おそらくそれはずっとそこにあるものだから、付き合っていく道を見つけ出すということなのだろう。
今年半ばぐらいになって、ようやく家を留守にすることに不安を感じず外出できるようになった。病床の夫がいつも家にいて、誰かがやってきていた時期が5年もあると、家を空けることが不安で、用事が済めば飛んで帰る毎日だったのだ。それがようやく心があまり乱されずに出かけられるようになったのが今年。
外に出たら出たで、世の中の変化の大きさに改めて呆然とする。
二人で出かけた場所や店は幾つもなくなり、新しい構造物が立ち上がり、技術もいつのまにかものすごく進歩している。
自分は相変わらず道端にへたり込んで立ち上がれず、遠くなっていくみんなの背中を眺めているような、そんな感じに襲われる。

そんな毎日の中でふと心に留まるのは、ラジオやテレビから流れてくる、同じ体験をした人の言葉。

 「忘れない、思い出さない、でいいんじゃない?」
 「もう夢も希望もないよ。でもさ、大きな声じゃ言わないけど、
  『あんたの分まで長生きするよ』ってね、思ってる」

そんな言葉を握りしめて、今は暮らしている。

今年夫の命日にミロンガができて、大勢の人に来てもらえたのはよかった。
来年もTLFに来てもらってミロンガをやる予定。
時期が時期なので、雪だけが心配だけど、きっとよい時が過ごせるはず。

新しい年、すべての人に祝福がありますように!

2019年12月23日月曜日

Ausencias(不在)

Ausencias は、今年亡くなった齋藤徹さんが1998年に出したアルバムのタイトルである。
意味は「不在」。徹さんがそのグループに入りたいと強く望みながら叶わなかった、
Astor Piazzola の楽曲を「卒業」するつもりで録音したアルバム。
ピアソラは95年亡くなった。ピアソラはもう、いない。しかし、その不在こそがその存在の大きさを感じさせる、との思いが込められてのタイトルだったと記憶している。

その徹さんとベースアンサンブルを組んでいた、田辺和弘、田嶋真佐雄、瀬尾高志の3人が
12月21日「Travessia de Tetsu」と題したライブを横濱エアジンで行なった。
3人とも、様々な形で徹さんの薫陶を受け、共演し、それぞれ個性的な活動をしているベーシストたち。その彼らが徹さんの楽曲を演奏するというのを楽しみにしていた。


 街
 Tango Eclipse 全3楽章
 西覚寺~トルコマーチ~Invitation
 フリーインプロヴィゼーション
 オンバク・ヒタム桜鯛 全3楽章
 Travessia


徹さんの音楽、徹さんの奏法が生き生きと蘇り、徹さんが演奏している姿が目に浮かぶ。
そこに、田辺さんのカンジェンゲ、田嶋さんのピチカート、弓を持ち替えて音色を変えるなど技ありの瀬尾さん、それぞれの魅力が加わる。
それはそれは特別な、素晴らしい音楽のひとときだった。

でも。
やっぱり徹さんはもういないんだなあ、とも感じてしまった。
徹さんの音楽はそこにあるけど、徹さんの「音」は聞こえなくて、
徹さんの不在が徹さんの存在が大きかったことを改めて知らせている。
三人の奏者の中に、しっかりと徹さんと徹さんの音楽が生きているからこそ、
そんな風にも思ってしまうわけで、嬉しくて寂しくて切ないような。

それで、
そういえば徹さん、Ausenciasってアルバム作ってたよね、
と思い出した。こんな風に思いがつながる言葉まで残していくところも徹さんらしい。