2018年7月17日火曜日

気が付けば夏休み w/TLF 2

(1からつづく)

海の日の16日は、銀座スタジオ・タンゲーラへ。
主宰のGYUさんには、前身のCuban Cafe でのミロンガの頃から、夫がお世話になっていた。「月曜日はGYUさんち」にずっと通っていた。TLFをGYUさんに紹介したのが夫だったことから、今回のミロンガで先日GYUさんに差し上げた夫の帽子とネクタイをディスプレイして、追悼したいと言ってお招き頂いたので、いそいそ出かけた。

TLFは別な場所でひと仕事してから19時半過ぎに到着。エレピの電源が繋がってない(!)とかマイクの音が出ない(!)とかバタバタしながらもライブミロンガスタート。ほどなく、これまた別の会場の仕事を終えたケンジ&リリアナのお二人も到着。20時半には仙台での仕事を終えたGYUさんが帰ってきて役者が揃い、デモへ。TLFとケンリリさんは、九州での「タンゴの節句ツアー」をいっしょにやっているけれど、東京でそれを見る機会がないので、GYUさんがお二人を呼んだのだそうで。LOCAと悪魔のロマンスで、ケンリリさんならではの足技炸裂。なんか、歳を重ねてますますキレがよくなるって、なんなんだろう。。。我が師匠、すごい。。。

  

そしてGYUさんが、もうひとりきょう紹介したい人がいます、と夫のことを話してくださる。
 
が、話す前から、もううるうるして声を詰まらせている。

そう、そうなんだよね、ちょっと思い出すと涙涙になってしまうんだよね。それで泣き崩れてしまう日々を、私もずっと送ってきたからわかる。そこからどうやって抜け出せるのか、いや抜け出すことがあるのか、と思ったけど、あるときラジオから流れてきた言葉、「忘れない、でも、思い出さない、くらいがちょうどいいんじゃない?」
そっか、そうなのか。それでいいのか、とこの作戦を採用したのは、ほんの少し前のこと。それが奏功したのか、ここ数日来のTLF効果か、泣いているGYUさんの横で、私は笑顔だった。

GYUさんのあとに、私も少し喋らせてもらった。夫が繋いだGYUさんとTLF、そのTLFと私たちを繋いだのはベーシストの齋藤徹さんで、その前に徹さんをタンゴの世界に呼んできたのは夫で、TLFと徹さんのライブでケンリリさんが踊るのを見て、私はケンリリさんの弟子にしてもらって・・・と、なんだか繋がりが広がってるんだか、堂々巡りしてるんだか。とまれ、またこの場所で新たなつながりも生まれ、心温まる夜だった。

17日火曜日、TLFのツアーはもう1日続くけど、私にとっての千秋楽はこの日のEl Chocloでのライブ。ミロンガでない、聞かせるためのライブは今回はここだけ。しかも、徹さんと歌手KaZzmaも一緒とあって、踊らない人踊る人で超満員。開場前に並んで最前列をゲット。
が、近すぎて、メンバーがカメラに収まらない。。。
 


プログラムは手馴れたレパートリーに新曲を散りばめ、KaZzmaの歌もふんだんに。El Chocloの魅力は、PAを使わず生音でTLFが楽しめる、ということだ。音は空気の振動だから、それを生で感じられるほど奏者と、奏者の心と、近くなる気がする。

そして2部。徹さんが加わる。大病から復帰して、副作用で身体が思うように使えない中で、それを受け入れてライブをなさっているのは知っていたけれど、私の方の気力がなくて今日まで聞きに行けずにいた。はじめの音が響いたとたん、わあ、徹さんの音だ!と胸がいっぱいになった。しっかり支え、踊るベースが入って、ケイトさんのピアノが遊び始めて、トリオの時とはまた違った楽しさに。そこにいるみんなの鼓動がひとつになって、ひとりひとりの思いや悩みや喜びや悲しみが、音と一緒に渦巻いていく、そんな一曲、一曲。これがタンゴなんだなあ。

うさこにはもう一日TLFに帯同してもらうことにして、家路に。

 


ライブで聴いた曲が絶え間なく脳内再生し、なんとなく口元に笑みが浮かぶ。(ちょっとアヤシイ人?)ミロンガで友達になったばかりの人とランチの約束をしている。週末のミロンガの予約を入れている。

自分にとって一番大事なもの、自分の半身を失って、もうこの世に何の未練もない、できるならばったり倒れて風化してしまいたい、と思うときもあったし、やりたいことなんか何にもない、一体生きているってなんなんだろう、と思いながら、誰も傷つけずに淡々とその日その日をやり過ごしていければそれで十分と思っていた日々が、ちょっと遠くなった。立ち直った、とか、落ち着いた、とか、元気になった、とかいうのとは違う、うまく言葉にならないけど、TLFの、タンゴの魔法のおかげで、自分の中に化学変化が起きたような一週間だった。

仕事を休んだのは一日だけだったから、「休みを取った」つもりはなかったんだけど、こんな風に連日夜遊びしていたのは何年ぶりだろう。この感じは、そう、夏休みだ!と気づいたのは、宴のあと。

(おしまい)



2018年7月15日日曜日

気が付けば夏休み w/TLF 1

福岡からTrio Los Fandangosが東京ツアーにやってきた。
今回は連休がかかるので、レギュラーで入っている仕事は1日お休み貰えば、けっこう聞きにいけそう、ということでふた月も前からせっせと予約を入れ、ミロンガ3回、ライブ1回参加するつもりで楽しみにしていた。

ただ、ミロンガに行くことには不安もあった。
そもそも、私がタンゴを踊るようになったのは夫と一緒だったからで、ふたりで出かけていた場所には一人では行く気になれず、夫が療養生活に入ってからたまに出かけるのも以前からひとりで行っていたところだったし、夫が亡くなってからはさっぱり行く気がしなくなっていたのだ。それでも、タンゴを通じて知り合った大切な友人たちとは会いたいので、4月に行ってみたのだけど、そこにいない人の姿を探してしまい、外に出た途端涙が溢れてきて、だめだこりゃ、と思ったのだった。


TLFの最初のミロンガは12日木曜日、マーシー&マギのVIVA LA MILONGA。ここは一人でしか行ったことがないし、去年TLFが来たときはちょうど私の誕生日でみんながお祝いしてくれたこともあり、行かずばなるまい。
 

夫の代わりのうさこを谷本さんに託す。

久しぶりのTLFは、やっぱり始めから「さあ、踊れ」とばかりに盛り上げてくる。
さっそくマーシーさんが誘ってくれてフロアに出たものの、あれ、ほかの人踊ってない?
3ヶ月ぶりでオタオタしてるのに、見ないで、みんな。。。
などという思いは、マーシーさんの素敵なリードで踊りに入ってしまえばもうどうでもよく、楽しく1タンダ踊る。きょうはもう、あとは聞くだけで十分。(と言いつつ踊ったけど)
2ステージかと思っていたら、1ステージ通し。その中程でマーシー&マギがデモ。
さっきまで笑いを取っていたマーシーさんがマギさんとともにしっとりとオブリビオンを踊る。彼らを見るのは4月末のステージ以来だったけど、このふたりは、タンゴのキモというか、タンゴをタンゴたらしめる「それ」をちゃんと持ったダンサーになったなあ、と嬉しかった。ブエノスに長期滞在修行しても、テクニックだけ持って帰ってきて、肝心なそこのところを身につけてないダンサーもいままで見てきたので、マーシー&マギの真剣な積み重ねが素晴らしいと思えるダンスだった。

「いつも全力」がモットーのふたり。今の自分全部で音楽と相手と溶け合って作るダンス。見ているうちに、自分の心が閉じていたことに改めて気づく。おざなりの言葉のやりとりでその場をやり過ごすのがいやで、もう隠遁生活に入ってしまおうかとすら思っていたし、「楽しい時間を過ごす」ということにも「それがなに?」という反応をしてしまうくらい、内向きだったけど、マーシー&マギを見ていたら、「彼らがいれば私もタンゴを続けられるかも」という気がした。ふっと風のように心をよぎったこの思いをちょっと捕まえておくことにして、家路についた。
(家に帰って見せる人がいないと写真を撮る気も薄れ、この日の写真はなし。)

翌13日の金曜日(縁起がいいのか悪いのか)、TLFの3人が我が家に来てくれた。
夫のために演奏する日として取っておいてくれた一日を、我が家でのんびり過ごすことに。仲間のFさんとPちゃんもワインやローストビーフやチーズなど持参で集まって、食べたり飲んだり。夜はどこかに出かけるので早めに来て夕方には出るという話だったけど、ビールとスパークリングと伊佐美とシャブリのおかげか、なおこさんも谷本さんもうつらうつら。。。私たちが結婚披露宴でオブリビオンを弾いたビデオや、その後行ったブエノスアイレス旅行のビデオを流したりして、結局21時すぎまで。
取り立てて夫の思い出話をしたわけでもなく、流れのままにゆるゆるとおしゃべりの時間を過ごしただけなのに、なんだか心も身体もほぐれていくようなひととき。
(そして、お客さんしてるというより家族で集まってるみたいで、家庭料理しか作らなかったこともあり、また写真を撮り忘れたのだった。)

14日土曜日は恵比寿のLa Bardosaへ。
Bardosaの主催者の棚田晃吉・典子両先生は、私が生徒でもないのにいつも良くしてくださる。この日もドアがあくと、ソファ席に誘導してくださったので落ち着いて過ごすことができた。
 

この日もファンダンゴスは始めからノリノリ。フロアいっぱいにみんな楽しそうに踊る。
きょうは先生方もデモはせず、みんなと踊っている。私も晃吉先生とミロンガを。とても洒落たリズムの取り方で、自分では見えない世界が開ける感じで楽しかった。
Bardosaで「タンゴうたクラス」を持っている歌手の西澤守さんも聞きに見えていて、かつて夫も歌を習っていたこともあり、いろいろおしゃべりして楽しかった。守さんは、みんなから勧められながらなかなかダンスを始めようとしない。靴のサイズを聞いたら夫の靴がイケそうだったので一足差し上げることに。ちゃんとレッスン始めるかなあ。

スタジオの隅の方で、なにやらステップを確認していた谷本さんが、タンダの最終曲で満を持して(?)誘いに来る。なるほど、気のおけない相手でウォームアップですね、はいはい。谷本さんも忙しいのに練習はしているようで、また上達していた。音楽をわかっている人だと確信が持てる相手と踊るのはこちらもとても気が楽なので、楽しい。ミロンガでは反則なのだけど、ひとつだけ注意点を告げてしまった。このあと楽しく踊ってもらうために。
土曜日なので平日より時間の早い終バスに乗れるタイミングで失礼する。室内が熱気でムンムンしていたので、外は少しは風があって涼しいかと思いきや、22時回っているのに外の方がもっと暑くてびっくり。都心はやっぱり暑い。
帰りがけ、典子先生が花束を下さる。ありがとうございます。

 

(つづく)